harustory’s diary

日々の思索、その物語

2018-03-01から1ヶ月間の記事一覧

三島由紀夫『金閣寺』に於ける美の観念

美を愛し、美を憧憬し続けた三島由紀夫。1970年11月、池袋東武百貨店にて「三島由紀夫展」が開催された。誰もがこれからの彼の活躍を疑わなかった。しかし、同月の25日、『豊饒の海第4部-「天人五衰」最終原稿を新潮社に渡した三島は陸上自衛隊市ヶ谷駐屯地…

『大つごもり』樋口一葉-罪の意識-

「おゝ堪えがたと竈の前に火なぶりの一分は一時にのびて、割木ほどの事も大台にして叱りとばさるゝ婢女(た)の身つらや」 かかる引用からも感じられるように、『大つごもり』を、厳しい境涯を甘受している下女の物語」という主題の下、私小説的に読む事に無理…

闘い

「詩人たちの生涯に目を通した。彼等はいずれも不幸だった。(中略)僕はこう云う彼等の不幸に残酷な悪意に充ち満ちた歓びを感じずにはいられなかった。」芥川龍之介『歯車』 何もかもが嫌で嫌でどうしようもなくて、人生を悲観し世の中を呪い、憔悴し尽くし…

近世国文学史之概略

京極夏彦『陰摩羅鬼の瑕』中、主要登場人物たる中禅寺秋彦林羅山を俎上に載せ、近世国学について言及する件があります。中古から近世の思想的変遷は幕府の思惑とも重なり興味深い分野の一つかと思います。 一、近世の和歌受容 近世の国学は所謂、因襲的な中…

amazarashiな人生を生きる僕らへ

傍らにはいつだって音楽があった。 中学の頃、アニソンやヴィジュアル系、ミスチルなんかをよく聴いていた。 高校の頃、xjapan、ベートーヴェン、ショパン、バッハなどのクラシック、オアシス、トラヴィス、U2などのUK音楽をよく聴いていた。 浪人の頃、…

ドストエフスキー案内1-「5大長編概説」

「五大長編」と書きましたが、『未成年』に関して再読をしておらず論考が現時点で危うい為に割愛します。人物論としてヴェルシーロフはとりあげたかったのですが。ドストエフスキーは私が「最も好きな」作家です。one of themではなく、最上の作家です。ゼミ…

回想1

17歳の回想。 これだけは書いておかなければならないと、そう思った。 いつだって、僕には死が纏わりついていた。苦しく、不吉な予感が僕を支配していた。それでも、僕は生きてこられた。理由は2つある。・物質的に生きられる環境が与えられていたから。・…

フォントの不統一

何故だかフォントが統一されない。。この謎が解明できない。綺麗な明朝体でそろっていてほしいのに…。

対話篇

「以前、先輩はウィトゲンシュタインの『論理哲学論考』を例に挙げ、いきなり難解な原典の訳本にあたるのは時に危険(それが婉曲的な意味であったしても)という旨を仰っていたと思いますが、それについて一寸申し上げたき事があります。 自分はこれまで何冊…

Crime and Punishment

死のうと思った。それは「恥辱」に耐えられないと感じたから。 彼が感じた恥辱がなんであるか、僕は今ここでそれを赤裸々に告白したいと思う。それが、彼の感情を解き明かす事は、そのまま僕の苦悩を、呪われし忌々しい懊悩を、解明することにもなるのだ。 …

天才作家-芥川龍之介の文章-

私は知己を百代の後に待たうとしてゐるものではない。 公衆の批判は、常に正鵠を失しやすいものである。現在の公衆は元より云ふを待たない。歴史は既にペリクレス時代のアゼンスの市民や文芸復興期のフロレンスの市民でさへ、如何に理想の公衆とは縁が遠か…

この感覚

ああ、この感覚!久しぶりに僕はこの研ぎ澄まされた、それは修行僧が修行中に陶酔に浸るかのような、感覚を覚えている! ずっとずっと、僕はこうだったじゃないか!10時間でも20時間でも、寝食をさえ忘れてひたすらに没頭する。世界に没入する。抽象的、観念…

キリストの幻影

「きみにこれを贈ろう。」 出し抜けにその男は言った。 突然目の前に出現したその男の唐突な、それでもどこか胸を穿つような声色に、僕は刹那、周章狼狽した。後、そんな己の態度を自嘲した。こんな男、こんな精神の脈動、そんなものは僕にとってもはやどう…

『金閣寺』-イデアとしての美-

「私は、どんな病気でも、おそれませぬが、皮膚病だけは、とても、とても、いけないのです。どのような苦労をしても、どのような貧乏をしても、皮膚病にだけは、なりたくないと思っていたものでございます。脚が片方なくっても、腕が片方なくっても、皮膚病…

乾坤一擲

私の眼に映ずる先生はたしかに思想家であった。けれどもその思想家の纏め上げた主義の裏には、強い事実が織り込まれているらしかった。自分と切り離された他人の事実でなくって、自分自身が痛切に味わった事実、血が熱くなったり脈が止まったりするほどの事…

『魔法少女まどか☆マギカ』-美樹さやかの生き方-

ねえ、杏子。私、幸せだったとは言えないかもしれないけれど…、でもね、決して不幸な人生だったなんて今は思ってないんだ。「誰かの幸せを祈った分、他の誰かを呪わずにはいられない。」 私は魔法少女の酷薄な宿命を感じたの。あんな、魂のない抜け殻のよう…

暁美ほむら

先程あちらで「癒しはここだけ」みたいなことを言っておきながら、もう疲れてきました。苦笑。そういう気分の時はそういう気分のままに書けばいい。ぐちゃぐちゃを吐露すればいい。添付は劇場版まどマギの特典でキャラクター一人がチケット一回につきもらえ…

ひぐらしのなく頃に-北条悟史の物語-

わたしは良心を持っていない。わたしの持っているのは神経ばかりである。芥川龍之介『侏儒の言葉』「雛見沢症候群」。それは『ひぐらしのなく頃に』という作品中の架空の風土病。発生には幾つか要因が考えられるが、その一つに精神的変調がある。 登場人物の…

就職

あれは確か暑い夏の時分。蝉の鳴き声が忙しなく響いては、その儚き命を、おのが存在の宿命を痛哭しているような日。教育実習を終えた僕は、教員採用試験を受けること(翌年に受け一次学科合格)も、私立学校を調べることも、一般企業に就職しようとすることも…

天人五衰

天界に住まう天人であれ、その姿は衰えていくという。ああ、僕の頭上の花鬘は、やがてその糸に綻びをみせるであろうか!ああ、私の透き通るような衣は埃と垢をつけるであろうか!私の腋下からは汗が滲み、目眩は感覚をずれさせるであろうか!そして、ぼんや…

Lament of the Lamb

2002年、中学生の僕は衝撃を受けた。『羊のうた』という名作に出会ったからだ。 僕は魅了された。作品に、そして冬目景という人物に近づきたいと渇望した僕は、おぼえはじめたばかりのパソコンの掲示板に書き込みをしたり、思いきってオフ会にいったり、冬目…