harustory’s diary

日々の思索、その物語

2018-01-01から1年間の記事一覧

大学入試国語の文章の滋味を知る肝要さ

ニーズに応える事が専門職たる証である。教師を一般化する勿れ。僕は自身をプロだと思っている。その自負の下、「入試現代文はどうしたらできるようになるか」という究極命題に答えるならば、それは"文章を広義的意味において楽しめるか否か"に解は収斂され…

夏目漱石『明暗』

夏目漱石未完の大作『明暗』について。 この作品、主人公は津田という名である。そして津田の女房の名はお延。僕はこのお延の境涯に最も共鳴する部分があった。同時にお延にこそより漱石的主題が色濃く現れているように感じられる。その主題とは「近代的自我…

慶應義塾大学文学部英語分析

ベートーヴェンの生涯

この苦患のはてに何が在るであろうか。知る由も無い。だが、この苦しみが、最後、人の為になれたらと願う。私は、私の苦しみは、それ故に生まれてきたような気がする。 「人生は地獄よりも地獄的である」これは芥川龍之介『侏儒の言葉』の有名な一節である。…

大学入試現代文の学力向上にむけて

前垢のDM引用です。それだけなんですね。ひどいな…あ、それは事実です!受からないです。受かっていたら東進、河合、駿台、代ゼミetc、合格者で溢れてしまっていることになります。その時期によって何を勉強すべきかは個々人の学力状況により異なり一般化は…

父と子

「わたしは良心を持っていない。わたしの持っているのは神経ばかりである」 芥川龍之介『侏儒の言葉』「俺たちは親には頼れないんだからしっかりしてくれよ。」 過去を遡及し加工して提示せんと試みれば、私の筆致は兄の言葉を捕らえる。ばらばらの断片と曖…

仏教伝来

日本では仏教は「鎮護国家」の為に導入され、国家的な内憂外患に対して霊的に備える為のものであった。それは形式的には鎌倉時代までは続いて行く。つまり、仏教は民衆のものではなく皇族貴族層の為のものであった。古代の日本仏教は、そうした流れの中で、…

美しい人

「『私は美しい存在でなければならない。』 この妄念はずっと、今に至るまで終始私を苦しめつづけたわ。まるで自分の意思をこえた何か悪魔的な存在が常に私を駆り立て続けては私の精神を支配してしまっていたようだった。 女学生時代だったかしら、私は自分…

摂食障害スペクトラムにみる強迫念慮機序

摂食障害はかなり辛い精神疾患です。この疾患はOCD spectrumであるBDDの要素がありまし。それは'思い込み"の心理。例えば拒食症のケースでは、周囲が当人に、「あなたは痩せすぎで病的でさえある」と諫めても、当人は納得できません。「私の苦悩は誰もわかっ…

或る慶應義塾大学文学部志望者との断章

山積されたTwitter前垢のDM中の言葉も、その一部はアカウント削除プログラムの慈悲であるかのように、残存している。無論血の通っていない文字の羅列ではない。こうして書きながら、自分で自分の、死んだと思っていた思念を圧迫し、その拍動の自律を確かめて…

RPG理論

知識が不足していても英語や古文、現代文などの文章読解は継続しなければなりません。よく、「完璧に知識を理解した上で〜」という声を耳にしますが、これは絶対にいけません。知識の上限を決める基準がないからです。東大に受かる人も知識が万全で十全な状…

山口達也事件について

TOKIO4人による謝罪会見を観た。不謹慎と誹られるかもしれないが、最初に湧出した感情は「感動」であった。何に感じて心動かされたのか。端的に言えば、メンバー4人が心底から謝罪の意を示しているその誠実さ、その姿勢、その本気である。特に松岡昌宏氏の言…

孤愁

夕刻。逢う魔が時などと言うが、僕は夕暮れのなんともいえない色彩が好きだった。殊、晩秋から冬にかけて、沈みゆく西陽とともに暗闇が空を鈍色に染めゆく、あの空の感じに陶然とした倒錯的寂寥を覚える。それは確かに寂しさの同化なのであるが、彼をしてう…

一年でゼロから早慶ダブル合格した高校教師の言

本日から、このブログにおいても学習(主に大学受験)についての内容も綴っていきたいと思う。その場合、タイトルにも表れているか、説得力を持たす為に自慢めいた表記をするケースも少なからずあることを先にことわっておく。まず、下の画像を見てもらいたい…

アラクニド

ガンガンコミックスJOKERスクウェア・エニックス発刊『アラクニド』という漫画がある。一巻しか読んでいないので、内容についてはわからないが、興味深い設定があった。それは作品のなかで、「先天性集中力過剰」と呼ばれる精神疾患。主人公はこの病気を患っ…

三島由紀夫『金閣寺』に於ける美の観念

美を愛し、美を憧憬し続けた三島由紀夫。1970年11月、池袋東武百貨店にて「三島由紀夫展」が開催された。誰もがこれからの彼の活躍を疑わなかった。しかし、同月の25日、『豊饒の海第4部-「天人五衰」最終原稿を新潮社に渡した三島は陸上自衛隊市ヶ谷駐屯地…

『大つごもり』樋口一葉-罪の意識-

「おゝ堪えがたと竈の前に火なぶりの一分は一時にのびて、割木ほどの事も大台にして叱りとばさるゝ婢女(た)の身つらや」 かかる引用からも感じられるように、『大つごもり』を、厳しい境涯を甘受している下女の物語」という主題の下、私小説的に読む事に無理…

闘い

「詩人たちの生涯に目を通した。彼等はいずれも不幸だった。(中略)僕はこう云う彼等の不幸に残酷な悪意に充ち満ちた歓びを感じずにはいられなかった。」芥川龍之介『歯車』 何もかもが嫌で嫌でどうしようもなくて、人生を悲観し世の中を呪い、憔悴し尽くし…

近世国文学史之概略

京極夏彦『陰摩羅鬼の瑕』中、主要登場人物たる中禅寺秋彦林羅山を俎上に載せ、近世国学について言及する件があります。中古から近世の思想的変遷は幕府の思惑とも重なり興味深い分野の一つかと思います。 一、近世の和歌受容 近世の国学は所謂、因襲的な中…

amazarashiな人生を生きる僕らへ

傍らにはいつだって音楽があった。 中学の頃、アニソンやヴィジュアル系、ミスチルなんかをよく聴いていた。 高校の頃、xjapan、ベートーヴェン、ショパン、バッハなどのクラシック、オアシス、トラヴィス、U2などのUK音楽をよく聴いていた。 浪人の頃、…

ドストエフスキー案内1-「5大長編概説」

「五大長編」と書きましたが、『未成年』に関して再読をしておらず論考が現時点で危うい為に割愛します。人物論としてヴェルシーロフはとりあげたかったのですが。ドストエフスキーは私が「最も好きな」作家です。one of themではなく、最上の作家です。ゼミ…

回想1

17歳の回想。 これだけは書いておかなければならないと、そう思った。 いつだって、僕には死が纏わりついていた。苦しく、不吉な予感が僕を支配していた。それでも、僕は生きてこられた。理由は2つある。・物質的に生きられる環境が与えられていたから。・…

フォントの不統一

何故だかフォントが統一されない。。この謎が解明できない。綺麗な明朝体でそろっていてほしいのに…。

対話篇

「以前、先輩はウィトゲンシュタインの『論理哲学論考』を例に挙げ、いきなり難解な原典の訳本にあたるのは時に危険(それが婉曲的な意味であったしても)という旨を仰っていたと思いますが、それについて一寸申し上げたき事があります。 自分はこれまで何冊…

Crime and Punishment

死のうと思った。それは「恥辱」に耐えられないと感じたから。 彼が感じた恥辱がなんであるか、僕は今ここでそれを赤裸々に告白したいと思う。それが、彼の感情を解き明かす事は、そのまま僕の苦悩を、呪われし忌々しい懊悩を、解明することにもなるのだ。 …

天才作家-芥川龍之介の文章-

私は知己を百代の後に待たうとしてゐるものではない。 公衆の批判は、常に正鵠を失しやすいものである。現在の公衆は元より云ふを待たない。歴史は既にペリクレス時代のアゼンスの市民や文芸復興期のフロレンスの市民でさへ、如何に理想の公衆とは縁が遠か…

この感覚

ああ、この感覚!久しぶりに僕はこの研ぎ澄まされた、それは修行僧が修行中に陶酔に浸るかのような、感覚を覚えている! ずっとずっと、僕はこうだったじゃないか!10時間でも20時間でも、寝食をさえ忘れてひたすらに没頭する。世界に没入する。抽象的、観念…

キリストの幻影

「きみにこれを贈ろう。」 出し抜けにその男は言った。 突然目の前に出現したその男の唐突な、それでもどこか胸を穿つような声色に、僕は刹那、周章狼狽した。後、そんな己の態度を自嘲した。こんな男、こんな精神の脈動、そんなものは僕にとってもはやどう…

『金閣寺』-イデアとしての美-

「私は、どんな病気でも、おそれませぬが、皮膚病だけは、とても、とても、いけないのです。どのような苦労をしても、どのような貧乏をしても、皮膚病にだけは、なりたくないと思っていたものでございます。脚が片方なくっても、腕が片方なくっても、皮膚病…

乾坤一擲

私の眼に映ずる先生はたしかに思想家であった。けれどもその思想家の纏め上げた主義の裏には、強い事実が織り込まれているらしかった。自分と切り離された他人の事実でなくって、自分自身が痛切に味わった事実、血が熱くなったり脈が止まったりするほどの事…