harustory’s diary

日々の思索、その物語

摂食障害スペクトラムにみる強迫念慮機序

摂食障害はかなり辛い精神疾患です。

この疾患はOCD spectrumであるBDDの要素がありまし。それは'思い込み"の心理。

例えば拒食症のケースでは、周囲が当人に、「あなたは痩せすぎで病的でさえある」と諫めても、当人は納得できません。

「私の苦悩は誰もわかってくれない」家族友人等の説得が、このように、当人を逆に刺激してしまう場合もあります。急性うつ病患者に対する「頑張れっ!」みたいなものです。

当人の思い込みはそれほどに強烈であり、その固着された強迫観念を引き剥がすのは容易ならぬ場合が多いです。

更に、痩せていく過程で、その痩身に陶酔していくのも危うい心理です。

ブログ等で拒食症患者と思われる方が、揚々と自らの体躯を載せていたりします。喫驚する周囲はその痩せ細った身体に対して健康的な美、健康的な痩身を指摘したりします。しかし、あれは本人のなかでは"自慢の身体"なのです。「健康的」という概念の倒錯がそこに生じてしまっているのです。

加えて、「これは自慢の、健康的で、美しいボディであらねばならない!」と執着する心理があります。壮絶な格闘によって艱難辛苦の果てに手に入れたその身体は当人において美しくなければならないのです。(それが認知の歪みであると理性では知悉している事例もあります。)

従って、このケースではコンプレックス自体は既に解消されていると思われるかもしれませんが、違います。ここには「もっともっと、もっともっともっと美しくっ‼︎」という心理が働き、やはり、より心配の極地にある周囲の意見に首肯できない自分を認めるのです。苦労して手に入れた身体を元に戻す行為は自己否定に繋がる、そんな機制もここには存しているでしょう。「もっと痩せなければならない!もっと綺麗にならなければならない!でないと私は醜いままだ!それは破滅だっ‼︎」そうした思い込みは、やがて、「この身体が最も美しいんだ」という強迫観念に変容するのです。

極度に痩せ細ってしまえば当然身体上の異変が起きる危険性があります。重大な健康被害の懸念があるわけですから、そのままにしておくわけにはなりません。その思い込み、認知の歪みを治療していく必要があります。

しかし、この「思い込み」の矯正、偏った認知を治すのは容易ならぬことです。当人が感じる思い込みの真実を、他者が同じように推し量ることは困難と私はあえて断言しましょう。

専門家は、自らが同様の体験はしていないかもしれませんが、知識と経験があります。その意味で、専門家に頼るのはやはり得策です。だが、専門家、最低でも精神保健指定医精神科医であっても、精神療法のみでの寛解が難儀であることもまた事実と言えましょう。服薬の是非が、特にSSRIにおけるヒーリーの論文以降目立つようになりましたが、薬物療法の否定は非常に危険であると私は考えています。