2018-03-01 Lament of the Lamb 2002年、中学生の僕は衝撃を受けた。『羊のうた』という名作に出会ったからだ。 僕は魅了された。作品に、そして冬目景という人物に近づきたいと渇望した僕は、おぼえはじめたばかりのパソコンの掲示板に書き込みをしたり、思いきってオフ会にいったり、冬目先生書き下ろしの同人誌を買うため、冬コミで凍えそうになりながら一人何時間も並んだりした。 元々僕の持っていた『羊のうた』は添付した文庫版ではなく、バーズコミックの単行本だった。(『コミックバーズ』2002年11月号に連載された。単行本は全7巻。)マーカーで線の引かれたオリジナルなそれは、僕にとって特別なものであった。(諸事情でその本は今僕の傍らにはない…)今も、あの"僕の羊"がここにないことに悲しみと寂しさを禁じえない。 この作品は悲哀に彩られた暗鬱な世界。社会から孤絶してしまった者達の哀しき嘆き。それは"うた"。…ああ、うたが聞こえる。それはまるで妖精の声。エルフェンリート。(『エルフェンリート』の主題も『羊のうた』と通奏低音をなしている。) 嘆きは叫び。キミは叫び続ける、居場所が欲しいと。 その腕が差し出される。切なさを内包したような、細く白いその皮膚の上を滑るように血が流れていく。鮮血は雪みたいにまっ白な腕の恩恵を受け、魅惑的なまでにその存在を主張している。そしてキミは言うんだ。もう戻れないのだから、こっちへおいで。こっちへ来て、お願い……と…。 彼は己の身に血をとどけた。彼女のものだった血は彼の体内で命となり、交わり、循環してゆく。彼は充たされた。 一粒の光。玲瓏と輝く粒子は希望。希望は愛によって胎生される。 キミ達の自己犠牲。それはキミ達の崇高で至高な愛。血がもたらす金科玉条の掟。 世界の外側で生きることを余儀なくされた者達は、その絶望の世界にあって、愛によって救済される。これはキミ達が刻んだ愛する人へ捧げる自己犠牲の物語。