harustory’s diary

日々の思索、その物語

2019-02-13から1日間の記事一覧

泉鏡花『外科室』

泉鏡花『外科室』 『外科室』に登場する伯爵夫人は、鏡花のイデーを体現した人物=鏡花の頭のなかにある理想像を形象化した人物、であると思う故、リアリティは希薄である。 麻酔無しの手術を夫人が求めそれに応じる医師高峰の描写には、常識を超越したとこ…

ガリラヤのカナ

「何のために大地を抱きしめたのか、彼にはよくわからなかったし、なぜこんなに抑えきれぬほど大地に、大地全体に接吻したくなったのか、自分でも理解できなかったが、彼は泣きながら、嗚咽しながら、涙をふり注ぎながら、大地に接吻し、大地を愛することを…

天童荒太『永遠の仔』

天童荒太『永遠の仔』(1999 幻冬舎) 氏が抱いている大きなテーマの一つに「家族」があります。そして、「家族」の喪失によって引き起こされるであろう精神的傷を、孤独、トラウマ、虐待、差別、愛情の欠如…といった問題として具体化させ、社会に対する…

王魯彦の『秋夜』

王魯彦の『秋夜』 極めて暗澹たる、「死に彩られた」小説。この「死」は作品世界に於いて円環を形成し、その楔は主人公に常に纏わりついて離れない。謂わば、主人公は死の世界に囲繞されている。主人公は幽界の中で現実との結合を消失し、死と地続きの特殊な…

いろいろー

文明開化による近代の曙光は、同時に従来からの小説の在り方、概念をを変容させるものとなった。近世までの大衆文学である所謂読本、人情本が徐々に衰退していく過程で、坪内逍遥は『小説神髄』に於いて、小説の方法論として「模写」及び「写実」を措定し、…

ラスコーリニコフ だ

彼は死刑を宣告された者のように自分の部屋へはいった。何ひとつ考えなかったし、また考えることもできなかった。ただとつぜん、自分の全存在をもって、自分にはもう理知の自由も意志もない、すべてがふいに最後の決心をみたのだ、ということを直感した。」 …

知らない

平田教授の声が響き渡る大教室の中、彼は、ぼんやりとしながら、携帯のボタンを押し、出てくる予測変換の言葉をみていた。 多くの学生達が十人十色の様をみせている。あるものはスマホを。あるものは後部座席で談笑にふけ、また別のものは迫る「公務員試験」…

知らない

平田教授の声が響き渡る大教室の中、彼は、ぼんやりとしながら、携帯のボタンを押し、出てくる予測変換の言葉をみていた。 多くの学生達が十人十色の様をみせている。あるものはスマホを。あるものは後部座席で談笑にふけ、また別のものは迫る「公務員試験」…