harustory’s diary

日々の思索、その物語

2018-02-24から1日間の記事一覧

回想

回想文。 「 今も僕はこの頃のノートを、『キミよ、未来の、きっと生きていてくれる僕よ、どうか、これを、キミの、それはキミの中に今もいる僕の、その声をどうか消さないでくれ!』そんな空白の叫びの中で聴くが為にこそ大切に抱え、そうして、ほら、こう…

賽は投げられた

「要するに私はうまい工合に、芸術という仮面を被って、愚かな弱い自分をごまかしていたのだ。哲学概論に一日かそこら頭をつっこんだり、まとまりもしない評論を読んでは、むやみに感激して赤線を引きまわしたり、トルストイが何といった、ベートーヴェンが…

A氏の痛哭

「いえいえいいんですよ。君は本当に気にしないでください。君は僕なんかのことで、こんな敗残者なんかの為に気をもむ必要なんか、まるで、まるでないのです! そもそもにして、人には人の苦悩を解決することは出来やしないのですよ。一体誰が真実作家の言…

『屍鬼』その二

「わたし、こんな命は嫌だわ。」◯◯は嘆く。か弱き◯◯は期せず異形の者となり、人間を吸血し絶息させることでしか自らの生を保つことが出来なくなった。そんな自分に苦悩する。罪深き存在だと煩悶する。そして、神様に見放されたと涙する。人としての秩序を離…

小野不由美『屍鬼』

小野不由美さんの『屍鬼』 は、人間を吸血し絶命させ生き延び続ける異能者-屍鬼(しき)-をめぐる物語をモチーフにしている。この作品には、様々な人物達の様々な生き方、価値観が顕著に描出され群像劇の様相を呈しているが、とりわけ、少女、沙子(すなこ)の…